飛行機のドアってどんな仕組みになっているんだろう?
そんな疑問を持ったあなたは、きっと好奇心が旺盛で観察力も冴えているに違いありません!
高度10,000メートルの上空を飛んでいるというのに、びくともしない。さては頑丈な鍵でもかかっているのか?
今回は、そんな謎が解明されますよ!
【番外編】航空科学博物館訪問 その6〔セクション41 客室の床下にあるもの〕 からの続きです。
学芸員さんの解説は「飛行機のドアの仕組み」、さらに「飛行機のドアはどのような開き方をするのか」に移ります。
※飛行機のドアには、このほかに「いったん内側に引き込まれたのちに、天井裏まで上昇するもの(B767など)」や、観光バスの扉のように「いったん外側にせり出してから、横方向にスライドするもの(B777,A320など)」があります。
実際に飛行機に搭乗したとき、座席が前方ドアの直後だったことがある方以外は、なかなか見る機会がないことでしょう。
B747の標準的な巡航高度である、高度約10,000m上空の気圧は、地上の気圧の26%程度です。
一方で機内は、乗員・乗客が快適に過ごせるように、地上の80%程度の気圧が保たれています。
これを与圧(Cabin pressurization)といいます。
この「与圧」により飛行中には内外の気圧差が生じ、飛行機のドアには内側から約10トンの圧力がかかった状態となります。
そのため、B747の客室ドアは外開き式ですが、ドア自体は機体側に開けられた開口部より大きく作られています。
これにより、ドアを内側から約10トンの力で胴体に押し付けることで、飛行中のドアが外側へ吹き飛ぶのを防止しています。
内装を剥がされたB747のL1(左側最前列)ドアです。
普通の考えでは、胴体の開口部よりも大きく作られたドアを、機体の外側に出すには、ドア自体を一旦取り外してから、横向きにして機外に放り出すほかありません。
開口部より大きいドアが外側に開くのは「ちょうつがい自体」が回転するため
学芸員さんが説明を続けます。「機内側のドアレバーを反時計回りに少し引き上げると、ドアの上下が折れて内側に引き込まれます。」
これを外側から見ると、次の2ヶ所です。
これでドアの上下方向の障害がなくなりました。
さらにドアハンドルを回すと、ドア全体が数センチほど機内側に引っ込み、同時にドアのヒンジ(ちょうつがい)の部分が回転します。
これにより、ドア全体が開くときの回転軸が機内側へ移動します。
そうすると、あら不思議。
ドアがどこにも引っかかることなくスムーズに外側に開くではありませんか。
ドアを開発したのボーイング社の天才技師
私は、これは一見無理に見えるようなことでも、発想を変えることで出来るようになるという良い事例だと思っています。
さらに、このようなメカニズムを発明した人は、かなり数学が得意だったのではないかと想像します。
※2023年追記:発明者はミルト・ハイネマンというボーイング社の技師とのことです。(参考文献:クライヴ・アーヴィング著「ボーイング747を創った男たち」講談社)
最後部のドアも、かなり捻じれた形をしているにもかかわらず、同じ方法で開閉が可能です。
それにしても飛行機のドア操作は、それが閉じられた瞬間から、機内の乗員・乗客が外の世界から完全に隔絶された運命共同体となるという「出発の儀式」をしているかのような厳かな雰囲気が漂うものです。
貨物用ドアは「力技」で圧力に耐える
ちなみに、貨物用ドアについては、開口部がとても大きいので、隠しボタンの操作によって電動で上側に大きく開く構造となっています。
また、閉じた後は、多数の電磁式ラッチで固定して、力技で圧力差に耐える構造となっています。
まとめ
ジャンボジェット機のドアは、
- 胴体の開口部よりも大きく作られている。
- 開口部より大きなドアが外側に向けて開くのは「ちょうつがい」それ自体が回転するため。
次回はドアに仕掛けられたもう1つの秘密に迫ります。